腰上げと、肩上げの歴史
着物のサイズ調整に行われる腰上げ(こしあげ)や、肩上げ(かたあげ)。
これを、洋服に置き換えて考えると、サイズが合わないから裾上げしてる→つまんで余った布が丸見え→ダサくない?!と感じる人も居ることでしょう。
何を隠そう、私も着物の勉強を始める前はそう感じでいました。
自分自身、身長が小さく昔から市販のお洋服のスソも年齢に合わせるとサイズが合わず、いつもスソを縫って貰っていました。
その記憶があったので、子供着物のサイズ調整をされている姿は尚更気になったのです。
ですが和裁の教科書(着物を縫う勉強の本)には必ず、サイズ調整の項目である「裾上げ(すそあげ)」の記載がありました。
これについては「サイズ」と「四つ身・一つ身」豆知識のページで触れていますますので簡単に説明すると、長く着られるように大きく縫っておくためと、おまじまいの意味があります。
浮世絵でも、昔の写真でもみんながサイズ調整の腰上げ・肩上げをしていますね。
今回は、このおまじないについて歴史背景に触れたいと思います。
昔の日本は、現在の日本とは異なり十分に栄養を取れる環境でも医療体制も貧弱でした。
子供たちが成人まで元気に過ごす事が今よりも難しい時代でした。
そんな頃に子供の着物に対してある言われがありました。それが「着物の大きさまでしか子供は成長しない」というお話です。
この事に関して正確な文献を読んだこともありませんし、事実だったか迷信だったか定かではありませんが、日本中にこの話が浸透していたことは確かです。
そこで小さな子をもつ家族達は子供の健やかな成長を願い
今の体よりも大きなサイズで着物を縫い
「この子は来年も着物を着る。もっと大きくなる。」
と願いを込めました。嫌な迷信から子供たちを守ったのです。
この名残が現在も残っており
「子供の着物、浴衣には腰上げや肩上げをすべきだ」
と言われるのです。
本当は、着物を新調してばかりいるお金持ちを皮肉っただけの冗談だったかも知れません。
お人形をもつ子供さんの写真ですが上等な着物姿で肩上げ・腰上げは見当たりません。こんな写真もいくつだって見つかります。
ただ、肩上げ腰上げをしない姿は「縁起が悪い」と厭われていた事は知っていた方が良いかな〜とは思います。
正直なところ、マナーに厳しいおばあちゃまにはチクリと言われるかも知れませんが、この令和の時代には気にする事では無いような気もします。和裁をした祖母も気にしませんし、母は知らなかった位ですから。
ただ、私のような子供でしたら「なんか嫌だ」と思うかも知れません。そんな時は「大きくなあれの、おまじない」と教えてあげてくださいね。
大人になった今となれば、腰上げや肩上げをした子供たちが可愛くて仕方ないのですねがね(笑)